[水質管理基準] [塩素消毒] [プールの消毒剤] [水質検査方法]
[水質管理基準]
[塩素消毒]
●殺菌と滅菌
・殺菌・・・一般に細菌、ウィルスなどの病原菌などを殺して無害化すること=消毒
・滅菌・・・病院で手術などに使う器具を高温の水蒸気などで全く生菌のいない状態にすること。
・塩素滅菌・・・水中の細菌を殺し、細菌学的に安全な水にすること。
●滅菌作用に影響を与える因子
塩素滅菌における滅菌効果に影響を与えるものは1)ph値、2)水中の塩素消費物質の量、3)接触時間、4)水温等があります。
1)ph値
水中の遊離有効塩素の存在比は右図のようになる。ここで次亜塩素酸(HOCl)と次亜塩素酸イオン(OCl−)は共に遊離有効塩素であるが、滅菌の効果は次亜塩素酸(HOCl)の方が遥かに大きいので滅菌効果はph5付近でmaxになっていることがわかります。
しかしながら、遊泳プールにおけるphの管理は5.8〜8.6となっています。ph値がph7.5より高くなると極端に滅菌効果がおちてきますのでやはり中性域のph7付近で管理することが望ましいと思われます。
特にアルカリ性によるpH値の上昇に留意してください。
2)水中の塩素消費物質の量
アンモニア性窒素、還元性物質、酸化されやすい有機化合物などの影響を強く受けます。特に、アンモニア性窒素が存在すると、通常の存在量の7.5−10倍の塩素がクロラミンとなり消費されます。
3)接触時間
遊離塩素が各種水中微生物を99%以上100以下殺菌する必要な時間 微生物の種類 pH 温度
℃
遊離塩素の量
ppm
殺菌所要時間 注
※は推定値
大腸菌 7.0 4 0.08-0.10 1分以下 7.0 25 0.08-0.12 1分以下 8.5 4 0.14 5分 8.5 25 0.08-0.14 3分アデノビールス3型(プール熱病原菌) 7.0 4 0.08-0.10 22秒 7.0 25 0.08-0.12 16秒以下 9.0 4 0.14 2分10秒 9.0 25 0.08-0.14 2分10秒赤痢アメーバ菌 7.0 4 0.08-0.10 10時間30秒 ※ 7.0 25 0.08-0.12 2時間30秒 ※好気性悍菌 7.0 25 0.08-0.12 1分チフス菌 7.0 4 0.08-0.10 1分以下 7.0 25 0.08-0.12 1分 8.5 25 0.08-0.14 3分 9.8 4 0.4 10分 コサッキッビールス
A2型
(無菌脳膜炎病原体)
7.0 4 0.08-0.10 40分 ※ 7.0 4 0.08-0.12 4分 ※ 9.0 25 0.08-0.14 45分 ※ 9.0 4 100- 10分 ※炭疽病 7.0 4 0.08-0.10 24時間 ※ 7.0 25 0.08-0.12 6時間 ※このように、菌との接触時間によっても効果が異なっています。
4)水温
水温が上昇すると反応速度が高まり滅菌効果も進行しますが、同時に残留塩素も分解、消耗が早くなります。
●残留塩素とは
残留塩素=水中に存在する殺菌力を持った遊離塩素および結合塩素(クロラミン)
残留塩素 遊離塩素(遊離残留塩素) HClO(次亜塩素酸) ClO−(次亜塩素酸イオン) HClO+ClO− 結合塩素(結合残留塩素) NH2Cl(モノクロラミン) NHCl2(ジクロラミン) NCl3(トリクロラミン) ※ 遊離塩素と結合塩素の殺菌力
結合塩素は遊離塩素に比べて1桁ほど殺菌効果が落ちますが、逆に残留効果は長持ちします。
※ 遊離塩素の殺菌力
遊離塩素にはHClO(次亜塩素酸)とClO−(次亜塩素酸イオン)がありますが、HClO(次亜塩素酸)のほうがClO−(次亜塩素酸イオン)にくらべはるかに殺菌能力が大きい。
ex) 塩素として0.1PPMの時の殺菌時間は、水温2−6℃でHClO(次亜塩素酸)を1とすると、ClO−(次亜塩素酸イオン)で80倍、NH2Cl(モノクロラミン)で350倍もの時間を要します。(by EPA(米国環境庁))
●塩素以外の消毒方法
1) オゾン(O3)処理
長所:・強烈な酸化剤で、有機物を簡単に分解してしまいます。滅菌力極めて高い。
短所:・残留性がないために滅菌効果が持続しない。
・故に次亜塩素酸ソーダとの併用が必然となります。
・ホルムアルデヒヒドをはじめとするカルボニル化合物が生成されます。これらの中には発ガン性や変異原性を有する化合物が含まれます。
2)紫外線処理
長所:・滅菌効果が大きく、副生成物ができない。
短所:・残留性がない。
・紫外線が水中で急速に減衰してしまう。
3)二酸化塩素(ClO2)処理
長所:・トリハロメタン等の有機塩素化合物を生成しない。
・滅菌効果がpH値に影響されない。
・残留性がある。
短所:・反応時に亜塩素酸を生成してしまう。
(亜塩素酸を多量に摂取するとヘモグロビン障害や貧血などがおこります。)
・二酸化塩素は爆発性の気体であり、取り扱いに注意をようします。
(爆発性をなくした安定化二酸化塩素がありますが高価なものになります。)
4)煮沸
長所:・誰にでもできる簡単な方法である。
・滅菌効果が大きくトリハロメタンなども揮散してしまいます。
(揮散するのは沸点が水より低い物質のみで沸点が水より高い物質は逆に凝 縮されます。)
[プールの消毒剤]
●無機系塩素剤
1)次亜塩素酸ソーダ(次亜塩素酸ナトリウム)
・[化学名] 次亜塩素酸ソーダ、次亜塩素酸ナトリウム
・[構造式] NaClO
・[次亜塩素酸の生成]
NaOCl + H2O → HOCl + NaOH
(次亜塩素酸ソーダ) (水) (次亜塩素酸) (水酸化ナトリウム)
・[概観]
淡緑黄色で透明な液体。空気、熱、光に対して不安定で、放置すると徐々に有効塩素を失います。
・[臭気]
塩素に似た特有の強い臭いがある。
・[比重と有効塩素]
比重
(20℃)
有効塩素濃度
(g/l)
次亜塩素酸ソーダ
(wt.%)
1.09 60 5.76 1.11 70 6.64 1.12 80 7.50 1.13 90 8.34 1.15 100 9.16 1.16 110 10.05 1.17 120 10.76 1.18 130 11.53 1.20 140 12.28 1.21 150 13.03
・[分解]
・[使用方法]
通常は、次亜塩素酸ナトリウム用の注入ポンプを使ってろ過系統の循環配管に圧入してプールへ送り込みます。この場合、ポンプヘッドでのガスロック、および配管への注入点での結晶による詰まりがあることがあるのでプールに残留塩素が出ていない場合はこれらの個所の点検が必要になります。
注入装置を用いず直接プールへ流し込む場合は、大量の水で薄めたものを全体に散布することが望ましいと思われます。
2)次亜塩素酸カルシウム
・[化学名] 次亜塩素酸カルシウム
・[商品例] 南海クリアー錠、南海クリアー顆粒N
・[構造式] Ca(OCl)2
・[次亜塩素酸の生成]
Ca(OCl)2 + H2O → 2HOCl + Ca(OH)2
(次亜塩素酸カルシウム) (水) (次亜塩素酸) (水酸化カルシウム)
・[形状]
白色錠剤、白色顆粒
・[保管方法]
湿気をさけて冷暗所に保存することをお奨めします。
・[使用方法]
顆粒のものは直接プールへ投入して使用します。
錠剤のものは商品によって、直接プールへ投与してよいものと、供給器をもちいなければならないものがありますので、商品ごとに確認してください。万一、供給器をもちいなければならないものを直接プールへ投与すると、プール本体を損傷する原因になります。直接投与との併用ができる商品でも供給器をもちいて使用することをお奨めします。
●塩素化イソシアヌル酸
1) ジクロルイソシアヌール酸ナトリウム
・[化学名] ジクロルイソシアヌール酸ナトリウム
・[商品例]
ペースサンニュートラルG、ペースサンニュートラルT、
スターダイクロンPG、スターダイクロンNPT
・[次亜塩素酸の生成]
(ジクロイソシアヌール酸ナトリウム) (水) (次亜塩素酸)
・[形状]
白色錠剤、白色顆粒
・[保管方法]
湿気をさけて冷暗所に保存することをお奨めします。
・[使用方法]
直接プールへ投与します。
2) トリクロルイソシアヌール酸ナトリウム
・[化学名] トリクロルイソシアヌール酸ナトリウム
・[商品例]
ペースサントップGX、ペースサントップT、
スタートリクロンPG、スタートリクロンPT
・[次亜塩素酸の生成]
(トリクロロイソシアヌル酸) (水) (次亜塩素酸)
・[形状]
白色錠剤、白色顆粒
・[保管方法]
湿気をさけて冷暗所に保存することをお奨めします。
・[使用方法]
必ず、商品指定の塩素供給器を使用してください。直接投与すると、プール本体の損傷の原因になることがあります。
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