1-感染症 |
(1)急性外耳炎・中耳炎 |
症状 |
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耳痛や外耳道(耳の穴)のはれ、頭痛、発熱がみられる。 |
原因
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外耳や中耳の皮膚・粘膜の小さな傷口から細菌(主としてブドウ球菌)が感染したことによる。 |
予防
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水泳前に耳垢を除去しておく、耳栓をする、水泳中・後には指や綿棒などで無理に水を取り除かないなどを注意する。外耳炎にかかっているときには水泳をしない。 |
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(2)夏風邪症候群 |
症状
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1〜4日続く発熱と上気道炎症状に、頭痛、嘔吐、下痢、筋肉痛、食欲不振など消化器症状もみることがある。夏季に多い。 |
原因
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腸管系ウイルス(コクサッキー、エコー、エンテロ、ポリオ)の感染である。 |
予防
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上記のような症状を有する者をプールに入れないこと、水泳後のうがい、プールの基準どおり適切な塩素消毒をすることである。 |
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(3)ヘルパンギーナ |
症状
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潜伏期(感染から発症までの期間)2〜4日で現れ、1〜4日間続く38〜39℃の発熱と咽頭痛、嚥下痛(飲み込むときの痛み)、それに口峡部付近の発赤と小水疱が特徴である。他に頭痛、腹痛、嘔吐をともなうこともある。 |
原因
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コクサッキーA群ウイルス |
予防
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前記の夏カゼ症候群に準じる |
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(4)急性リンパ結節性咽頭炎 |
症状
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周囲に紅暈をともなった丘疹が口峡部に好発し、6〜10日で消失する |
原因
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コクサッキーウイルス |
予防
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ヘルパンギーナと同様 |
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(5)熱性咽頭炎 |
症状
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発熱と著明な咽頭発赤が主で、ほかに後咽頭や口蓋扁桃に滲出物や小白苔をともなうことがある。小児に多い |
原因
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アデノウイルス |
予防
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プール水の消毒と水泳後のうがいをする |
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(6)アデノウイルス肺炎 |
症状
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発熱、頭痛、倦怠感などのインフルエンザ様症状の後に現れることがある一過性肺浸潤で、いわゆる異型肺炎である。5歳以下の小児に多く、成人にはまれである。3歳までの乳幼児で重症の気管支炎を認め、致命率15%の発生例も報告されている。 |
原因
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アデノウイルスの4、7型 |
予防
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プール水の消毒と水泳後のうがい、それに感冒様症状のある者を入水禁止とする |
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(7)咽頭結膜炎(プール熱) |
症状
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夏から初秋にかけて学童に流行する。3〜7日の潜伏期の後、4〜5日持続し午後より夕方にかけて高くなる39℃ほどの発熱と、喉のはれと痛み、リンパ節のはれなど咽頭炎の症状、それに結膜炎で発症する。しばしば流行性を示すが、感冒様症状にとどまる場合も多い |
原因
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アデノウイルスの(3、7型など)で、咽頭や結膜の分泌物、大便を介して感染する |
予防
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プール水や腰洗い槽の塩素消毒の徹底と、水泳後のうがいと洗眼、それにタオル、ハンカチ、目薬などを他人と共用しないことである。なお、これは学校保健法施行規則で定める第2類の伝染性疾患であるため、主要症状が消退した後2日を経過するまで出席は停止させる。学校プール閉鎖期間の目安は最後の患者発生後1週間で、閉鎖中のプール水の遊離残留塩素濃度は2〜3?/Lとする。 |
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(8)急性ろ胞性結膜炎 |
症状
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眼瞼(まぶた)や眼球結膜(白目)の発赤、瞼結膜のろ胞形成を認める。成人に多い。 |
原因
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アデノウイルス3,7型よることが主で咽頭結膜炎の不全型といわれている。 |
予防
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咽頭結膜炎と同様。 |
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(9)流行性角結膜炎(はやり目) |
症状
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結膜と角膜の炎症。成人型は発熱などの全身症状が軽く、眼の局所症状が著明である。潜伏期は4〜6日で、結膜に僞膜形成と充血が出現し、異物感や眼脂、耳前リンパ節腫脹もみられることがあるが、7〜10日後に角膜潰瘍まで進行すると失明の危険もある。全経過は2〜3週間であるが、その間は感染能力があるので注意を要する。乳幼児型は全身症状と結膜炎症状が著明であるが、角膜は侵されない。 |
原因
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アデノウイルス(主に8型)が原因で結膜分泌物から感染するが、プール水よりタオルの共用により伝染する可能性が高い。 |
予防
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咽頭結膜炎と同じである。水泳後のうがいと洗眼、それにタオル、ハンカチ、目薬などを他人と共用しないことである。この疾患は学校保健法施行規制の第3類伝染疾患で、学校長の判断で出席停止させる。学校プール閉鎖の目安は最後の患者発生後2週間で、その間の遊離残留塩素濃度は2〜3mg/Lとする。 |
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(10)急性出血性結膜炎(アポロ病) |
症状
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数時間より1日の潜伏期で結膜や眼瞼の充血や腫脹を認める。 |
原因
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エンテロウイルス |
予防
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咽頭結膜炎と同じである。この疾患も学校保健法施行規則の第3類伝染疾患で、学校長の判断で出席停止させる。学校プール閉鎖の目安は最後の患者発生後4日間で、遊離残留塩素濃度は2〜3?/Lとする。 |
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(11)伝染性軟属腫(みずいぼ) |
症状
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皮膚に、中心部のくぼみとやや白っぽい光沢のある1〜10mmの丘疹(半球状隆起)が現れる。潜伏期は2〜6週間である。大多数は乳幼児から小学校低学年である。 |
原因
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ポックスウイルス群による飛沫感染である。 |
予防
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タオルの共用禁止、更衣室の床等の清掃と乾燥、それに水泳直後に充分シャワーをする。なお、この疾患は平均6.5カ月で自然治癒する。 |
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(12)手足口病 |
症状
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3〜5日の潜伏期で、手足に現れる紅色の丘疹または水疱と口腔内の水胞が特徴である。 |
原因
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コクサッキーまたはエンテロウイルスが原因で飛沫感染する。 |
予防
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伝染性軟属腫と同様である。 |
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(13)ウイルス発疹症 |
症状
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乳幼児に発生する多彩な皮膚の発疹で、発熱や上気道炎症状、下痢、無菌性髄膜炎をともなうこともある。 |
原因
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コクサッキーウイルス、エコーウイルス |
予防
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症状のある乳幼児の入水禁止とタオルなどの共用の禁止をする。 |
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(14)伝染性膿痂疹(とびひ) |
症状
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皮膚に1〜2mmの小水疱ができ、1〜2日後には指頭大まで増大する。 |
原因
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黄色ブドウ球菌の飛沫感染による。 |
予防
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感染者の入水禁止とタオルの共用禁止である。 |
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(15)足白癬(みずむし) |
症状
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足底や趾間にびらん、水疱、肥厚が生じる。 |
原因
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カビの一種である白癬菌が原因で、更衣室やプールサイドの床に落下した保菌者の落屑が付着することによる。 |
予防
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更衣室等の床の清掃と乾燥である。 |
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(16)ウイルス性肝炎 |
症状
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15〜50日潜伏期で、全身倦怠感や食欲不振などのカゼや胃腸炎様症状で発症し、後に肝機能障害のため黄疸が生じる。致命率は、0.2〜0.3%で症状の出ない不顕性感染も多い。 |
原因
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保菌者の大便を介してA型肝炎ウイルスで感染する。乳児では数カ月、学童以上では2〜3週間はウイルスを排泄する可能性がある。 |
予防
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保菌者の入水禁止や水の消毒など汚染の防止と感染経路の遮断が主体である。このウイルスは化学的処理に抵抗性があり、また不顕性の保菌者もいるため予防が困難であるが、プールで感染することはまれであるといわれている。 |
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(17)胃腸炎、乳児下痢症 |
症状
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腹痛と嘔吐、下痢をみる。 |
原因
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アデノウイルスで、主として大便を介して感染する |
予防
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プール水の消毒と罹患者の入水禁止で予防する。 |
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(18)細菌性赤痢 |
症状
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潜伏期が2〜4日で発病の1日ぐらい前より全身倦怠感や食欲不振、腹部不快感をみる。悪寒ときに戦慄(ふるえ)と発熱をみることも多い。頭痛や腹痛、関節痛をともなうこともある。発熱に前後して腹痛や下痢が現れ、嘔吐もまれならず認める。2〜3日で解熱することが多い。便は1日に数十〜2、3回、いわゆるしぶりばらで、粘液や血液、膿が混じる。水様や泥状のことも少なくない。最近は軽症の下痢のみのことも多い。 |
原因
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赤痢菌が原因で、最近ではD群が主体であり、大便を介して感染する。 |
予防
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手指の消毒や保菌者の入水禁止による感染経路の遮断とプール水の汚染の防止であるが、赤痢菌は塩素消毒で容易に死滅する。なお、この疾患は法定伝染病で、患者が発生した場合には保健所へ届け出なければならない。 |
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(19)腸チフス、パラチフス |
症状
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腸チフスの場合、潜伏期は7〜21日(10〜14日が多い)で、第1週目には段階的に熱が上昇し、40℃以上が約1週間持続し、その後は徐々に下降して4週で平熱にもどるという特有な熱型を示す。脈は体温に比べて少ない。皮膚にバラ疹が出て、脾臓が腫大するのが特徴である。初期には頭痛と睡眠障害、食欲不振、全身倦怠感が出現する。多くは便秘を呈し、腹部(特に右下腹部)の痛みをともなうこともある。3週以後に腸出血や腸穿孔を合併する危険がある。パラチフスはこれより軽症である。 |
原因
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サルモネラ菌群のうちのチフス菌とパラチフス菌により、患者や保菌者の大便を介して感染する。この菌は水中で数週間生存し、飲料水を介しても感染し得る。 |
予防
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保菌者、特に長期保菌者を厳重に監視する。この疾患も法定伝染病であるので、保健所への届け出が必要である。 |