プールシーズン中は、以下のことを行う必要があります。
運動に対する身体的な適否の判断が必要で、メディカルチェックをする必要があります。
メディカルチェックとは運動を開始するにあたり実施される健康診断の事です。
●小児のメディカルチェック
●成人のメディカルチェック
●水泳を禁止または中止を考慮すべき疾患
1.全身運動に支障のあるもの
(ツベルクリン反応陽転1年以内の者、結核・脳膜炎・高度な肺気腫・重症の喘息、高度の貧血、腎臓疾患(急性賢炎・ネフローゼなど)
2.心臓・循環器系に異常のあるもの
(先天性心疾患、心不全(既往歴のある者を含む)、チアノーゼの強い者、川崎病による冠状動脈瘤、心臓に異常のあるリウマチ熱・脚気、運動に支障のある弁膜症、肥大性心筋症、発症6ヶ月以内の心筋梗塞、高度の狭心症、コントロールされていない高血圧、高度の低血圧、動脈硬化症)
3.眼、耳、鼻、皮膚に急性炎症のあるもの
(角膜炎・結膜炎、外耳炎・中耳炎、鼻炎・副鼻腔炎、みずむし・じんましん・湿疹など)
4.けいれんのおそれのあるもの
(てんかんで発作を起こす危険のある者、下腿筋けいれん(こむらがえり)常習者)
5.その他
(重症の月経困難症、予防接種直後の者、皮膚に腫れものや切傷等のある者、寄生虫卵陽性者、発熱・下痢などの症状のある者など)
●水泳を制限すべき疾患
1.虚弱体質 2.特異体質 3.慢性胃腸炎 4.軽度の心臓・腎疾患 5.喘息 6.アレルギー性鼻炎、結膜炎
7.自覚症状のない貧血、脚気 8.病後回復者 9.肢体不自由者
1.感染症
(1)急性外耳炎・中耳炎
症状:耳痛や外耳道(耳の穴)のはれ、頭痛、発熱。
原因:外耳や中耳の皮膚・粘膜の小さな傷口から細菌(主としてブドウ球菌)による感染。
予防:水泳前に耳垢を除去しておく、耳栓をする、水泳中・後には指や綿棒などで無理に水を取り除かないなどを注意する。
外耳炎にかかっているときには水泳をしない。
(2)夏風邪症候群
症状:1~4日続く発熱と上気道炎症状に、頭痛、嘔吐、下痢、筋肉痛、食欲不振など消化器症状。夏季に多い。
原因:腸管系ウイルス(コクサッキー、エコー、エンテロ、ポリオ)の感染。
予防:上記のような症状を有する者をプールに入れないこと、水泳後のうがい、プールの基準どおり適切な塩素消毒をすること。
(3)ヘルパンギーナ
症状:潜伏期(感染から発症までの期間)2~4日で現れ、1~4日間続く38~39℃の発熱と咽頭痛、
嚥下痛(飲み込むときの痛み)、それに口峡部付近の発赤と小水疱が特徴。他に頭痛、腹痛、嘔吐をともなう。
原因:コクサッキーA群ウイルスの感染。
予防:上記のような症状を有する者をプールに入れないこと、水泳後のうがい、プールの基準どおり適切な塩素消毒をすること。
(4)急性リンパ結節性咽頭炎
症状:周囲に紅暈をともなった丘疹が口峡部に好発し、6~10日で消失する。
原因:コクサッキーウイルスの感染。
予防:上記のような症状を有する者をプールに入れないこと、水泳後のうがい、プールの基準どおり適切な塩素消毒をすること。
(5)熱性咽頭炎
症状:発熱と著明な咽頭発赤が主で、ほかに後咽頭や口蓋扁桃に滲出物や小白苔をともなう。小児に多い。
原因:アデノウイルスの感染。
予防:プール水の消毒と水泳後のうがいをすること。
(6)アデノウイルス肺炎
症状:発熱、頭痛、倦怠感などのインフルエンザ様症状の後に現れることがある一過性肺浸潤で、いわゆる異型肺炎。
5歳以下の小児に多く、成人も発症することがある。3歳までの乳幼児で重症の気管支炎を認め、
致命率15%の発生例も報告されている。
原因:アデノウイルスの4、7型の感染。
予防:プール水の消毒と水泳後のうがい、それに感冒様症状のある者を入水禁止にする。
(7)咽頭結膜炎(プール熱)
症状:夏から初秋にかけて学童に流行。3~7日の潜伏期の後、4~5日持続し午後より夕方にかけて高くなる39℃ほどの発熱と、
喉のはれと痛み、リンパ節のはれなど咽頭炎の症状、それに結膜炎で発症。しばしば流行性を示すが、
感冒様症状にとどまる場合も多い。
原因:アデノウイルスの(3、7型など)で、咽頭や結膜の分泌物、大便を介して感染。
予防:プール水や腰洗い槽の塩素消毒の徹底と、水泳後のうがいと洗眼、それにタオル、ハンカチ、
目薬などを他人と共用しないこと。
これは、学校保健法施行規則で定める第2類の伝染性疾患であるため、主要症状が消退した後2日を経過するまで出席は停止。
学校プール閉鎖期間の目安は最後の患者発生後1週間で、閉鎖中のプール水の遊離残留塩素濃度は2~3mg/Lにする。
(8)急性ろ胞性結膜炎
症状:眼瞼(まぶた)や眼球結膜(白目)の発赤、瞼結膜のろ胞形成を認める。成人に多い。
原因:アデノウイルス3,7型よることが主で咽頭結膜炎の不全型。
予防:プール水や腰洗い槽の塩素消毒の徹底と、水泳後のうがいと洗眼、それにタオル、ハンカチ、目薬などを他人と共用しないこと。
これは、学校保健法施行規則で定める第2類の伝染性疾患であるため、主要症状が消退した後2日を経過するまで出席は停止。
学校プール閉鎖期間の目安は最後の患者発生後1週間で、閉鎖中のプール水の遊離残留塩素濃度は2~3mg/Lにする。
(9)流行性角結膜炎(はやり目)
症状:結膜と角膜の炎症。成人型は発熱などの全身症状が軽く、眼の局所症状が著明である。潜伏期は4~6日で、結膜に僞膜形成と充血が
出現し、異物感や眼脂、耳前リンパ節腫脹もみられることがあるが、7~10日後に角膜潰瘍まで進行すると失明の危険もある。
全経過は2~3週間であるが、その間は感染能力があるので注意を要する。乳幼児型は全身症状と結膜炎症状が著明であるが、
角膜は侵されない。
原因:アデノウイルス(主に8型)が原因で結膜分泌物から感染するが、プール水よりタオルの共用により伝染する可能性が高い。
予防:プール水や腰洗い槽の塩素消毒の徹底と、水泳後のうがいと洗眼、それにタオル、ハンカチ、目薬などを他人と共用しないこと。
これは、学校保健法施行規則で定める第2類の伝染性疾患であるため、主要症状が消退した後2日を経過するまで出席は停止。
学校プール閉鎖期間の目安は最後の患者発生後1週間で、閉鎖中のプール水の遊離残留塩素濃度は2~3mg/Lにする。
(10)急性出血性結膜炎(アポロ病)
症状:数時間より1日の潜伏期で結膜や眼瞼の充血や腫脹を認める。
原因:エンテロウイルスの感染。
予防:プール水や腰洗い槽の塩素消毒の徹底と、水泳後のうがいと洗眼、それにタオル、ハンカチ、目薬などを他人と共用しないこと。
この疾患も学校保健法施行規則の第3類伝染疾患で、学校長の判断で出席停止させる。
学校プール閉鎖の目安は最後の患者発生後4日間で、遊離残留塩素濃度は2~3mg/Lとする。
(11)伝染性軟属腫(みずいぼ)
症状:皮膚に、中心部のくぼみとやや白っぽい光沢のある1~10mmの丘疹(半球状隆起)が現れる。潜伏期は2~6週間である。
大多数は乳幼児から小学校低学年である。
原因:ポックスウイルス群による飛沫感染である。
予防:タオルの共用禁止、更衣室の床等の清掃と乾燥、それに水泳直後に充分シャワーをする。
なお、この疾患は平均6.5カ月で自然治癒する。
学校プール閉鎖の目安は最後の患者発生後4日間で、遊離残留塩素濃度は2~3mg/Lとする。
(12)手足口病
症状:3~5日の潜伏期で、手足に現れる紅色の丘疹または水疱と口腔内の水胞が特徴である。
原因:コクサッキーまたはエンテロウイルスが原因で飛沫感染する。
予防:タオルの共用禁止、更衣室の床等の清掃と乾燥、それに水泳直後に充分シャワーをする。
なお、この疾患は平均6.5カ月で自然治癒する。
学校プール閉鎖の目安は最後の患者発生後4日間で、遊離残留塩素濃度は2~3mg/Lとする。
(13)ウイルス発疹症
症状:乳幼児に発生する多彩な皮膚の発疹で、発熱や上気道炎症状、下痢、無菌性髄膜炎をともなうこともある。
原因:コクサッキーウイルス、エコーウイルスの感染。
予防:症状のある乳幼児の入水禁止とタオルなどの共用の禁止をする。
(14)伝染性膿痂疹(とびひ)
症状:皮膚に1~2mmの小水疱ができ、1~2日後には指頭大まで増大する。
原因:黄色ブドウ球菌の飛沫感染による。
予防:感染者の入水禁止とタオルの共用禁止。
(15)足白癬(みずむし)
症状:足底や趾間にびらん、水疱、肥厚が生じる。
原因:カビの一種である白癬菌が原因で、更衣室やプールサイドの床に落下した保菌者の落屑が付着することによる。
予防:更衣室等の床の清掃と乾燥である。
(16)ウイルス性肝炎
症状:15~50日潜伏期で、全身倦怠感や食欲不振などのカゼや胃腸炎様症状で発症し、後に肝機能障害のため黄疸が生じる。
致命率は、0.2~0.3%で症状の出ない不顕性感染も多い。
原因:保菌者の大便を介してA型肝炎ウイルスで感染する。乳児では数カ月、学童以上では2~3週間はウイルスを排泄する可能性がある。
予防:保菌者の入水禁止や水の消毒など汚染の防止と感染経路の遮断が主体である。このウイルスは化学的処理に抵抗性があり、
また不顕性の保菌者もいるため予防が困難であるが、プールで感染することはまれであるといわれている。
(17)胃腸炎、乳児下痢症
症状:腹痛と嘔吐、下痢をみる。
原因:アデノウイルスで、主として大便を介して感染する。
予防:プール水の消毒と罹患者の入水禁止で予防する。
(18)細菌性赤痢
症状:潜伏期が2~4日で発病の1日ぐらい前より全身倦怠感や食欲不振、腹部不快感をみる。悪寒ときに戦慄(ふるえ)と発熱をみることも
多い。頭痛や腹痛、関節痛をともなうこともある。発熱に前後して腹痛や下痢が現れ、嘔吐もまれならず認める。
2~3日で解熱することが多い。便は1日に数十~2、3回、いわゆるしぶりばらで、粘液や血液、膿が混じる。
水様や泥状のことも少なくない。最近は軽症の下痢のみのことも多い。
原因:赤痢菌が原因で、最近ではD群が主体であり、大便を介して感染する。
予防:手指の消毒や保菌者の入水禁止による感染経路の遮断とプール水の汚染の防止であるが、赤痢菌は塩素消毒で容易に死滅する。
なお、この疾患は法定伝染病で、患者が発生した場合には保健所へ届け出なければならない。
(19)腸チフス、パラチフス
症状:腸チフスの場合、潜伏期は7~21日(10~14日が多い)で、第1週目には段階的に熱が上昇し、40℃以上が約1週間持続し、
その後は徐々に下降して4週で平熱にもどるという特有な熱型を示す。脈は体温に比べて少ない。皮膚にバラ疹が出て、
脾臓が腫大するのが特徴である。初期には頭痛と睡眠障害、食欲不振、全身倦怠感が出現する。多くは便秘を呈し、
腹部(特に右下腹部)の痛みをともなうこともある。3週以後に腸出血や腸穿孔を合併する危険がある。
パラチフスはこれより軽症である。
原因:サルモネラ菌群のうちのチフス菌とパラチフス菌により、患者や保菌者の大便を介して感染する。
この菌は水中で数週間生存し、飲料水を介しても感染し得る。
予防:保菌者、特に長期保菌者を厳重に監視する。この疾患も法定伝染病であるので、保健所への届け出が必要である。
2.環境による障害
(1)塩素剤による眼障害
症状:遊泳中や後に結膜の充血、異物感、羞明、角膜のびらんを生じる。
原因:腰洗い槽や基準を上回るような高濃度の塩素消毒により、水中での次亜塩素酸やそれらより生じ空気中に気化される
三塩化窒素が結膜や角膜を損傷することによる。
応急処置:症状が現れたら塩素濃度の低い水道水や点眼薬で眼の洗浄を行う。
予防:水泳中はゴーグルをできれば使用し、塩素濃度の高い腰洗い槽には目をつけないこと、
プール水の遊泳残留塩素濃度をできるかぎり1.0mg/L以下に保つようにする。また、屋内プールでは換気を十分行うこと。
(2)日焼け(日光皮膚炎)
症状:日光照射後1~2時間よりはじまり、12~24時間で発赤や腫脹はピークとなる。
腫脹が高度となると水疱を形成し、広範囲に及ぶと熱傷(やけど)様症状を呈する。ときに日射病を合併する。
これらの反応は個人差がある。
応急処置:まずタオルなどで冷湿布し、高度なものは直ちに治療を受けさせる。
予防:日焼けしやすい者は日光に長時間肌をさらさせないようにし、サンスクリーン剤を塗る。
(3)熱中症
① 熱射病
原因:運動後などに熱のため体温調節中枢が失調することによる。
症状:42~43℃の体温上昇と発汗停止、血圧上昇、速く大きな脈拍などの症状から全身けいれんや昏睡に至ることもある。
死亡率も高い傾向にある。
応急処置:涼しいところに上半身を高くして寝かせて安静し、氷などで体を冷やして体温の降下を図る。
② 熱けいれん
原因:大量の発汗後に多量に飲水したことで、血中のナトリウム不足となり起こる。
症状:筋肉に有痛性のけいれんを生じるが、体温や血圧は正常である。
応急処置:食塩水やイオン飲料を飲ませる。
③ 熱虚脱
原因:体表温度の異常な上昇が皮膚血管を拡張させ、このため心臓へもどる血液量が減少し、未梢循環不全、つまりショックを呈する。
症状:血圧低下と速くて弱い脈、多量の汗がみられるが、腋下などの深部体温は正常である。めまいや意識消失をみることもある。
応急処置:涼しいところで下半身を高くして寝かせて安静とし、食塩水を飲ませる。
④ 熱衰弱
原因:高温に長時間慢性的に曝露されて起こる。
症状:倦怠感や食欲不振などがみられる。
応急処置:涼しいところで安静にさせる。
(4)低体温症
原因:周囲の環境温度が低いことにより体表から熱がうばわれることによる。
症状:ふるえ、手足が冷たく蒼白になる、ねむけをもよおす、呼吸数や脈拍数ならびに血圧の低下などが起こる。
意識消失やけいれんをきたすこともある。
応急処置:意識があればあたたかい飲み物を与え、体を毛布などでくるむ。
意識がもうろうとしていれば、体を40~42℃くらいの湯につけて暖めるが、このときに腕や脚は外に出しておく。
これは、手足の未梢血管が急に拡張してショック状態となるのを防ぐためである。
また、足をわずかに挙上するほうがよい。
予防:プールの水温管理に注意し、寒気を感じたら水泳を中止させる。
また、アルコール飲料は未梢血管を拡張させ熱喪失を増大させるので、水泳前は禁止する。
3.体調による障害
(1)過換気症候群
原因:不安感や興奮状態、パニック、過度の運動により呼吸が速く粗い過換気の状態となり、
血中の酸素分圧が上昇して二酸化炭素が減少する。脳の呼吸調節中枢は血中の二酸化炭素分圧に反応するために、
呼吸のリズムが狂い、このために呼吸困難やけいれんが生じる。
症状:呼吸困難(閉塞感や過換気と呼吸停止の繰返し)、手足のしびれ、手足のけいれんや強直、興奮状態、
さらには意識消失に至る。
応急処置:気を落ち着かせて安静とし、ゆっくりとした呼吸をするように指示し、改善がみられないときは
ビニール袋で口と鼻をおおって吐いた息を再呼吸させる。このときに酸素吸入を行ってはならない。
予防:不安感や疲労などのストレスの徴候が現れたら直ちに水泳を中止し、休息させる。
(2)低血糖症
原因:食事を抜いて運動したりすると血糖が低下する。糖尿病で治療中のときなどに起こりやすい。
症状:異常な空腹感や過度の冷汗、しびれ、悪寒、頭痛、めまい、混乱状態などの症状が現れ、重症では意識消失やけいれんが起こる。
応急処置:アメやジュースなどで直ちに糖分を補給してやるとおさまる。
予防:食事を無理に抜かない。糖尿病のある者では長時間の運動の際には途中で糖分を補給する。
(3)泳げる者の溺水
泳げるはずの者や泳ぎが上手な者が、溺れるはずのない浅いプールなどで溺れる事がある
原因:1.冷水刺激による反射 2.飲酒 3.胃の膨満 4.恐怖感 5.筋肉けいれん
6.平衡失調(鼻口部からの水による中耳部の出血を原因とするもの)
7.意織消失
8.水泳前の過呼吸によって誘発される呼吸促迫感のない酸素欠乏によるもの
9.水の気管内吸引で起こる心臓抑制反射によるもの
予防:泳げると思われる者に対しても決して監視の目を怠ることのないように注意することである。
1.水質管理基準
水質以外の日常管理項目
●排水口および循環水取入れ口
基準:鉄蓋・金網が正常な位置にネジ・ボルト等で固定されていること。
頻度:入泳前
●記録の作成
・入泳人数・水温、残留塩素、水素イオン濃度
・排水口および循環水取入れ口の安全確認
・消毒剤の使用方法
●浄化設備およびその管理状況
循環浄化式の場合には、ろ材の種類、ろ過装置の容量およびその運転時間が、プール容積および遊泳者数に比して十分であり、その管理が常時確実に行われていること。循環ろ過装置の処理水質は、その濁度が0.5度以下であること(0.1度以下が望ましい)また、循環ろ過装置の出口に検査のための採水栓等を設けること。
(検査時期および頻度)使用期間中に1回以上、適切な時期に行う。
「遊泳用プールの衛生基準について」(平成13年7月24日健発第774号)
* :Deutsches Institute fur Normung[ドイツ規格協会]
*1:λ=436nmでのスペクトル
*2:オゾン処理済みのプール水には適用されない。硝酸塩20mg/lは硝酸性窒素4.5mg/lになる。
*3:ろ液の酸化能が無負荷プラントの補給水の酸化能より低いなら、その低い方の値を基準としなければならない。しかし、補給水の酸化能が0.5mg/lO2 または「 2mg/lKMnO4消費量より下回る場合0.5mg/lO2または、2mg/lKMnO4消費量を基準値としなければならない。オゾンを用いる場合は、二重値となる。
DINでは、要水質管理項目として 他に次のものがある。
・残留活性炭 ・残留オゾン ・オルトリン酸塩 ・残留鉄 ・残留アルミニウム
2.塩素消毒
(1)殺菌と滅菌
殺菌:一般に細菌、ウィルスなどの病原菌などを殺して無害化すること=消毒
滅菌:病院で手術などに使う器具を高温の水蒸気などで全く生菌のいない状態にすること。
塩素滅菌:水中の細菌を殺し、細菌学的に安全な水にすること。
(2)滅菌作用に影響を与える因子
塩素滅菌における滅菌効果に影響を与えるものは1)ph値、2)水中の塩素消費物質の量、3)接触時間、4)水温等があります。
1)ph値
水中の遊離有効塩素の存在比は右図のようになる。ここで次亜塩素酸(HOCl)と次亜塩素酸イオン(OCl-)は共に遊離有効塩素であるが、滅菌の効果は次亜塩素酸(HOCl)の方が遥かに大きいので滅菌効果はph5付近でmaxになっていることがわかります。
しかしながら、遊泳プールにおけるphの管理は5.8~8.6となっています。ph値がph7.5より高くなると極端に滅菌効果がおちてきますのでやはり中性域のph7付近で管理することが望ましいと思われます。
特にアルカリ性によるpH値の上昇に留意してください。
2)水中の塩素消費物質の量
アンモニア性窒素、還元性物質、酸化されやすい有機化合物などの影響を強く受けます。特に、アンモニア性窒素が存在すると、通常の存在量の7.5-10倍の塩素がクロラミンとなり消費されます。
3)接触時間
遊離塩素が各種水中微生物を99%以上100以下殺菌する必要な時間
4)水温
水温が上昇すると反応速度が高まり滅菌効果も進行しますが、同時に残留塩素も分解、消耗が早くなります。
(3)残留塩素とは
残留塩素=水中に存在する殺菌力を持った遊離塩素および結合塩素(クロラミン)
●遊離塩素(遊離残留塩素)
・HClO(次亜塩素酸)
・ClO-(次亜塩素酸イオン)
・HClO+ClO-
●結合塩素(結合残留塩素)
・NH2Cl(モノクロラミン)
・NHCl2(ジクロラミン)
・NCl3(トリクロラミン)
※ 遊離塩素と結合塩素の殺菌力
結合塩素は遊離塩素に比べて1桁ほど殺菌効果が落ちますが、逆に残留効果は長持ちします。
※ 遊離塩素の殺菌力
遊離塩素にはHClO(次亜塩素酸)とClO-(次亜塩素酸イオン)がありますが、HClO(次亜塩素酸)のほうがClO-(次亜塩素酸イオン)にくらべはるかに殺菌能力が大きい。
ex) 塩素として0.1PPMの時の殺菌時間は、水温2-6℃でHClO(次亜塩素酸)を1とすると、ClO-(次亜塩素酸イオン)で80倍、NH2Cl(モノクロラミン)で350倍もの時間を要します。(by EPA(米国環境庁))
(4)塩素以外の消毒方法
1.オゾン(O3)処理
長所:
・強烈な酸化剤で、有機物を簡単に分解してしまいます。滅菌力極めて高い。
短所:
・残留性がないために滅菌効果が持続しない。
・故に次亜塩素酸ソーダとの併用が必然となります。
・ホルムアルデヒヒドをはじめとするカルボニル化合物が生成されます。これらの中には発ガン性や変異原性を有する化合物が含まれます。
2.紫外線処理
長所:滅菌効果が大きく、副生成物ができない。
短所:残留性がない。紫外線が水中で急速に減衰してしまう。
3.二酸化塩素(ClO2)処理
長所:
・トリハロメタン等の有機塩素化合物を生成しない。
・滅菌効果がpH値に影響されない。
・残留性がある。
短所:
・反応時に亜塩素酸を生成してしまう。(亜塩素酸を多量に摂取するとヘモグロビン障害や貧血などがおこります。)
・二酸化塩素は爆発性の気体であり、取り扱いに注意を要します。(爆発性をなくした安定化二酸化塩素がありますが高価なものになります。)
4.煮沸
長所:
・誰にでもできる簡単な方法である。
・滅菌効果が大きくトリハロメタンなども揮散してしまいます。
(揮散するのは沸点が水より低い物質のみで沸点が水より高い物質は逆に凝縮されます。)
3.プールの消毒剤
(1) 無機系塩素剤
(1) 無機系塩素剤
[化学名]
次亜塩素酸ソーダ、次亜塩素酸ナトリウム
[構造式]
NaClO
[次亜塩素酸の生成]
NaOCl(次亜塩素酸ソーダ) + H2O(水) → HOCl(次亜塩素酸) + NaOH(水酸化ナトリウム)
[概観]
淡緑黄色で透明な液体。空気、熱、光に対して不安定で、放置すると徐々に有効塩素を失います。
[臭気]
塩素に似た特有の強い臭いがある。
[比重と有効塩素]
[使用方法]
通常は、次亜塩素酸ナトリウム用の注入ポンプを使ってろ過系統の循環配管に圧入してプールへ送り込みます。この場合、ポンプヘッドでのガスロック、および配管への注入点での結晶による詰まりがあることがあるのでプールに残留塩素が出ていない場合はこれらの個所の点検が必要になります。注入装置を用いず直接プールへ流し込む場合は、大量の水で薄めたものを全体に散布することが望ましいと思われます。
2.次亜塩素酸カルシウム
[化学名]
次亜塩素酸カルシウム
[商品例]
南海クリアー錠、南海クリアー顆粒N
[構造式]
Ca(OCl)2
[次亜塩素酸の生成]
Ca(OCl)2(次亜塩素酸カルシウム)+ H2O (水) → 2HOCl(次亜塩素酸) + Ca(OH)2(水酸化カルシウム)
[形状]
白色錠剤、白色顆粒
[保管方法]
湿気をさけて冷暗所に保存することをお奨めします。
[使用方法]
顆粒のものは直接プールへ投入して使用します。
錠剤のものは商品によって、直接プールへ投与してよいものと、供給器をもちいなければならないものがありますので、
商品ごとに確認 してください。万一、供給器をもちいなければならないものを直接プールへ投与すると、
プール本体を損傷する原因になります。直接投 与との併用ができる商品でも供給器をもちいて使用することをお奨めします。
(2) 塩素化イソシアヌル酸
1.ジクロルイソシアヌール酸ナトリウム
[化学名]
ジクロルイソシアヌール酸ナトリウム
[商品例]
ペースサンニュートラルG、ペースサンニュートラルT、スターダイクロンPG、スターダイクロンNPT
[次亜塩素酸の生成]
[形状]
白色錠剤、白色顆粒
[保管方法]
湿気をさけて冷暗所に保存することをお奨めします。
[使用方法]
直接プールへ投与します。
2.トリクロルイソシアヌール酸ナトリウムs
[化学名]
トリクロルイソシアヌール酸ナトリウム
[商品例]
ペースサントップGX、ペースサントップT、スタートリクロンPG、スタートリクロンPT
[次亜塩素酸の生成]
[形状]
白色錠剤、白色顆粒
[保管方法]
湿気をさけて冷暗所に保存することをお奨めします。
[使用方法]
必ず、商品指定の塩素供給器を使用してください。直接投与すると、プール本体の損傷の原因になることがあります。
4.水質検査方法
(1)残留塩素測定
1) 遊離残留塩素
比色式DPD法、無試薬式ポータブル残留塩素計、DPD発色による吸光光度法等の測定器があります。
比較的一般的なダイヤル式残留塩素測定器を説明します。
Step0 準備
・DPD法用比色式残留塩素測定器
・DPD試薬
・りん酸緩衝液
・採水びん(ふたつき、褐色びんが望ましい。)
Step1 試薬の使用量
a) DPD試薬 1回使用量 0.2g
b) リン酸緩衝液 1回使用量 0.5ml
※ a)b)をあわせた錠剤タイプのものもあります。
Step2 測定
1) 測定個所(定められたところ)で採水びんを定められた深さまで沈める。
2) ふたをとり、採水が終わりしだい、ふたをする。
Step3 被体の採取
1) Step2で採水した試料を比色管2本に10ml(検水)ずつ入れる。(1本は対象水となします。)
2) 1本検水にリン酸緩衝液0.5mlを加えて振り混ぜます。
3) DPD試薬0.2gを加えます。
4) 2本の比色管を測定器にSETして標準比色板と比較します。
5) 数値の読み値が遊離残留塩素になります。
発色時の注意事項
※1 pH値が低すぎたり高すぎたりすると、実際の濃度と異なった発色を呈する事があります。
※2 濃度が高すぎると写真のように発色を呈しなくなります。
よって、濃度高いはずなのに発色しない場合には適当量の水で稀釈して再度測定してください。
(2)pH測定
1) 比色法
・検水10ml に対し0.5mlのBTB試薬をもちいることで簡単に測定できます。
・BTB試薬以外にもPR試薬等があります。
注意事項
・BTB試薬には発色範囲が限られていますのでご注意ください。
検水に残留塩素があると正しく発色されない場合があります。
(左からpH5.6、5.8、6.0、6.2、6.4、7.0、7.2、7.6、8.6、9.0)
概ね、6.2-7.4 程度までしか使用できないことがわかります。
検水にはNaOHを使用。次亜塩素酸ナトリウムで同じことをやってみましたが発色しませんでした。
(3)デジタル式pH計
・極部を水に浸しスイッチを入れるだけでpH値が求められます。
・測定範囲が広い。
・残留塩素があってもpHの測定ができる。
弊社では、BTB法よりもデジタル式pH計を用いてpH測定することをお奨めします。
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